ソロが近づく。音を立てて。
いいものではない。
なぜ一人で舞台に立つのか。
自身が俯瞰の眼から離れ自我と仮想の他人の思惑の中で自分というのを表現をする。
恐ろしい限りだ。いや、というよりおぞましいに近い。
何も自分に備わっていない。何も携えず何を語るのか。
何も掴んでいない手で何を与えるというのか。
自分は何者かそれを知らずして自分の何を語るのか。
語るその先に何を望もうというのか。
本番前の緊張感が度々陥れるネガティブの谷間。いや、しかしもっと根本的な。
ただそんな暗雲たる自己懐疑、嫌悪にも光明が刺す。
全てはその日集まる理解者達の為に。
その一点。
その為に自己、自我、自分を俺が舞台に上げ一時間を完成させきっちり差し出します。
戻らない一時間を戻る必要のないとこまで昇華させたい。
平原慎太郎