スペイン滞在記:マドリッド11月1日

大分寒くなってきたマドリッド。
今日は実に奇麗な夕焼けを見た。
今住むこの辺は少し高台にあって空を遮る物がすごく少ない。
雲の流れや空の表情がよくわかる。
見とれて歩いていると犬の糞を踏んでしまうが、いつの間にかそれすら気にならないようになってしまった。
一ヶ月経とうとしている。
時間は止まず進まずだなと思うこの頃。

本日は町中がストップする一日だった。つまり祝日だった。
こちらで言う所のお盆にあたるのか、皆それぞれのお墓に行く日な様で市場やスーパーはことごとく昼間の
営業を終えるとクローズした。
しかし、バルや個人の商店なんかは根強く店を開いていたりする。
確かに。
もしもその国に自身の親や祖父の墓が無ければそんな一日は無関係だなと思い、祝日とは無関係な店で買い
物を済ませまた歩いた。

最近住んでる地区を歩いていると「チノ、チノ(中国人)」と叫ばれる。
今日もそうだった。これはすごく貴重な経験だと思っている。
いろんな気付きがあるからだ。
そういう言葉を遠くから吐く、吐かれるという事象が普段の日本での生活では起きないからだ。
この経験は自分にアジアンとしての容姿と一生を与えられている事を再認識させてくれる。
つまりアイデンティティが自他ともにアジアンとして備えられているという事だ。
この再認識の機会は日本ではそうない。むしろ自分がどこのどういう人間かふと解らなくなったりする。
現在我が国は和製英語が飛び交い、食事の種類は無数にあり、服装、雑誌、あらゆるものがサンプリングさ
れ存在する。これはこれで素晴らしいし面白い時代だとは思う。
ただ、他国民から見ると自分はまごう事なきアジアンでそれ以外のなんでもないのだ。
勿論、容姿だけの話しではある。しかしその容姿=自分の内容という事の様に叫ばれるとなんだか不思議な
気持ちになるのだ。ま、因に僕はチノではないのだが。容姿を見てその容姿なりの見た目を大声で吐かれる。
実に気持ちのいい大きさの声で罵声を飛ばす。
ただ、別に悪い気も良い気もしないのだが、あまりにしつこいとどんな言葉でも腹が立つので、
「うるせー、おりてこい」と叫んだがそのちらっと見えた姿はなんとも裕福とは言い難い身なりであった。

なにかとりとめのない気持ちを抑えつつまた歩く。

街は前日がハロウィンだったせいか、今日も何度かお化けの顔をした青年とすれ違った。
ハロウィンはお化けに変装する。
移動中に携帯で話しているゾンビの画はシュールで良かった。あとデビルが小型犬を散歩している画もセンス
を感じた。皆変装で、自分ではない何かになるのを楽しんでいるんだなと思ったりした。
共感できる。が、むしろ自分でしかないその姿になる為にこの仕事をしているのかななんて思ったりもした。
そう考えると今日は充実したなと思いてくてく歩いていると夕日が飛び込んできたのだ。

ああ、今日は本当に夕焼けが美しかった。言葉はそれを言い表す為に存在しているのだと考えるが、しかし、
言葉にできないくらい美しい夕焼けであった。
そこに何があったのか。夕焼け以外に隠されていた気がするがそれを自分は読み取れずにいる。
ただそんな夕焼けを見てると上に書いた様な事を淡々と考えた。
そんな一日だった。
来週の木曜日いよいよ研修初の本番を迎える。
腕試し。それは人から学びそれを瞬発的に発揮できるかいなか。そう、現役かどうかのジャッジ。
まだまだ腕を試して行きます。

夕焼けの奇麗な本日。
星空もとても奇麗だという事を伝えてパソコンを閉じます。

平原慎太郎

 

 

2 Responses

  • 自分ではないなにか、か。

    素敵な仕事ですね。

    “私”であることの重みからの解放。

    もう少し脳内で反芻したいテーマです。

    村上春樹さんのダンスダンスダンスの
    最後の方の言葉を思い出しました。

    踊る、ということに内包される。

    まとまらない感想ですみません。
    ハッとすることがあった文章だったので、
    何か書き留めておきたかったのです。
    また、読みに来ます。

    ありがとうございます。

  • ruuさん
    メッセージありがとうございます。
    昨日はこんな一日でした。
    自分が自分である実感を強くするのは自分が本来の自分とかけ離れた時に限って意識してしまう事があります。反面教師的な。
    マドリッドも自分を遠くにやってくれるのです。
    でも遠くに行けば行く程、遠くに行かない自分が残り悲しくなったり笑えたりします。
    今日はワインでも飲みます。
    素敵な感想ありがとうございました。

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