のぞき/know the key

北の海
芸術や美術は人の心を魂の状態へと復元させる。
現代社会は価値観の多様性が生まれたのと、医療、心理学などの普及から心や精神という、
そもそも存在が曖昧なものを形状化してしまい、物質的な地位を与えたてしまったと僕は考えてるが、
優れた芸術作品などはそれらを身ぐるみ剥ぎ取り、魂だけの状態に戻してくれると思っている。

美しい自然風景にも似たその感動は社会からの解放を人間に取り計らう。

そういった表現手段として僕はダンス(舞踊)というカテゴライズしたものに属し、
魂の昇華を目指し作品を制作する訳だが、あらゆるジャンルの至高にはおそらくそういった力が備えられている。

綺麗事無しに心が震えるものが見たい。
その欲求は他人を支配する事はないし、また支配される事もない。

さて、固い前置きを後にして取り組んできた作品を振り返る。

視覚は鍵であり風景はドアだとして、自身の鍵を使い未知なるドアを開ける為にその鍵に合う鍵穴を探す訳だが、
塩田千春の作品はそういった意味で知らぬドアを開けさせてくれた。
時代の先端にいる方は黙々と作品を創る。
更にKAATスタッフの創作に対する姿勢は作り手に寄り添ったものだった。
トップの態度というのが組織にこれだけ影響するものかと改めて思い知らされた。
作品に携わってくださった方への感謝が一ヶ月経っても色褪せない。
本物に会える時の高揚感。ありがとうございました。

広島は三年目。
少しだけ名前が認知されてきたのか、作品をとても寛容に受け止めてくれる視線を感じた中新作をやらせてもらった。
続けるという事は本当に大変だが、広島のアステールプラザ、島村夫妻、それをサポートするメンバー達が変わらぬ笑顔で支えてくれる。いつか恩返ししたいと考えてます。
広島からの帰路、来るべきその時を思い描きました。
ありがとうございました。

北海道にて行われた「Room Service」でも、自身の作品に出演する若いダンサー達。
そして裏方のスタッフ勢の手によって場が支えられた。
本当に新しい価値の観念を、ましてや地方に花咲かすというのはホトホト難しいと思うのだが、
森嶋君はそれをあっけらかんとした態度で、眼差しを真っ直ぐ伸ばして取り組み続けている。
スタッフ勢とも気がつきゃ6年の付き合い。いや、早いね本当に。
でもそうじゃなきゃあのスタートダッシュきれないよね。こうやってかけた時間と思いが形になるのは嬉しい。
拓さん、ミスター、上田氏、菅ちゃん最高の時間をありがとう。

ダンスは瞬間の芸術だと言われるが。価値観の意味においては美術や芸術もそこから離れない。
斬新さや発見された新価値は時間により奪われその時代を示すただの指標へと変容しかねない。
一度見たものは既に個人の中では価値を失う事もあるだろうし、そういう意味で真新しさ、
個人的なコンセプトが待つラディカルな発想もまた刹那的だ。
新宿南口のバスタという新しいビルの前に、20年くらい前に建った駅ビルがあるが、
普遍性を携えずこの世に落ちた結果の、さぞ新しかった当時のデザインの儚さを伝える。
ま、その哀れみを楽しむのであれば絶好の建造物なんだけど。
バスタも新しくできるであろう建造物にどう立ち会うのか頭を過る、あの辺が最近好きだったりする。
えっと話を戻すと。

ダンス作品の何が面白いのかと言われれば、その作品を作る素材そのものが人間で、
その裏を支えるのもまた多くの人間だってこと。
本番の為に強く思う。
当前の事柄だが、彼らとの積み重ねられた時間が具象物となって瞬間に現れる時に僕は前述した、
魂が揺さぶられる理由もあると思った。
関係しながら生きるという人間の本質的な部分は変わらない。
そしてそれを客観的に見て良いものだと感じる部分かあるのだろう。

11月以降2016年度の締めくくりも予定満載だが、その事を頼りにやっていきたい。

秋晴れの穏やかな日差し。
皆さんも良い観劇ライフを。

 

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