スペイン滞在記:返信

昨年のクリスマスから悪天候が続いてる。
折角のお正月も曇天でどこにも行けない。
スタジオで体を動かした後は家で食事をしたり、ネットを見たりして日々を過ごす。

正月なんてものは皆でそういう雰囲気を作るからソワソワしたり高揚感が沸くもんで、餅が無かったり、
年賀状が無かったりそもそも友人が居ないこちらではテンションの上げようがなくここ数ヶ月となんら
変わらない日々だった。それはそれで悪くはない。
脈絡もなくゆっくりしたいなと思う気持ちが沸く訳でなく始めからゆっくりなのだ。
人間は社会がなくなったら途端に人生が長くなるなと感じた。

正月が過ぎて行った。

カルメンワーナーを招聘し企画を行った。無事に公演が開けそして閉じた。
参加者達数人から言葉が送られてきたが皆充実したようだった。
カルメン本人からも終了後即メールが来た。ダンサー達が素晴らしく叫んだと書いてあり、幸福という
言葉が使われていた。こっちの手紙とはまた違ったスペイン流の感動の手紙。新鮮。

ありがたい。

ダンスは見ない人にとっては全く未知の世界だと思う。
ダンスやってる人でも自分が嗜むダンスではないジャンルを見るのはおっくうだと感じる事もある。
ただダンスというのはずっと存在している。世界中に。不思議なんだけどもそうなのだ。
ってことは、ダンスをしてない人でも楽しめる要素がそこには潜んでいる可能性があると僕は思うのです。
確かにコンテンポラリーダンスってのはどんどん個人的な嗜好に進んでいて東京という人口過多の街では
様々なスタイルの舞台がもう毎日行われてる。

そんな中、こんな形で10年以上実力と実績を兼ね揃えて来日し続けてる振付家が居るってのも一つ。
その人を毎年見続ける人生の楽しみ方というのもあると思う。いいもんです。
歌番組面白いよね。次々と華やかな歌手が代わる代わる歌を歌う。その手の感動もあると思う。
けど僕はたまにそれがすごく寂しい
代わる代わる人がでてきて2年前に誰が居たかなんて忘れてしまいそうになる。
それはアーティストのせいじゃない。
脱線。

正月、遠方の自分の団体の企画の報告を聞いて喜ばしく思う事がこの年の始まりなんだと思った。
素晴らしい。

嵐は正月と共に去った。久しぶりに散歩でも出て乾いたマドリッドの街を少し歩こうと思う。

平原慎太郎

CAIN photo:Hiroyasu Daido
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